~5分でわかる高額療養費制度Q&A~高かった医療費が戻ってきます!
高額療養費制度って知っていますか?病気やケガで医療費が高額になった場合、手続きをすれば国からお金が支給される、とってもありがたい制度なんです。
医療保険を考えるためには、いざ、病気になったときにどのくらいお金がかかるの?ということを正しく知っておく必要がありますから、この制度についてもきちんと理解しておいたほうがいいですね(お金も戻ってきますしね!)。ポイントをQ&A形式でまとめてみました。
■高額療養費制度の基本
■支給額の計算方法
■手続きしたいときは
■その他の気になる疑問
【高額療養費制度の基本】
Q1:高額療養費制度ってなに?
A1:月ごとにかかった医療費が一定以上に高かった場合、一部を国から支給してもらう制度です。
かかった医療費のうち、規定の額を超えたぶんが、あとから戻ってきます。このおかげで、月にかかる医療費には一定額以上にはなりませんから、とっても助かることになります。
病気にかかったら、いくらお金がかかるかわからない……と不安な人も多いと思いますが、月ごとに限っては、一定以上に医療費がかかりすぎないよう、こんな制度が用意されているんですね。
なお、「かかった医療費」とは、実際に病院の窓口で支払った額のこと。
健康保険のおかげで3割負担の場合は、その3割のお金について考えます。医療保険に入っていて、保険金をもらった場合も、差し引く必要はありません。
「病院から請求された金額」に対する制度だと考えておくとよいでしょう。医療保険の保険金と、高度療養費制度の支給は関係がないので、医療保険に入っていると、医療保険のぶんだけトクすることになりますね。
Q2:どの健康保険に入っていても利用できる?
A2:利用できます。
会社員の人は勤めている会社の健康保険に、自営業の人などは国民健康保険に加入していると思います。日本では法律で国民全員がなにかの公的な健康保険に入るしくみになっていますから、よくわからなくても必ず入っているはずです。
高額療養費制度はどの健康保険であっても利用できます。
つまり、誰でも利用できる制度ということ。支給される額などにも違いはありません。ただし、健康保険によって、手続きの仕方が違うことがあります。
Q3:医療費ってどこまでが対象? 通院の交通費も入る?
A3:通院の交通費は含みません。差額ベッド代や先進医療の費用なども対象外です。
医療機関に支払うお金で、健康保険の対象になるものが、高額療養費の対象と考えるとわかりやすいと思います。院外薬局で処方箋を持って行って買う薬の代金も含まれます。
通院の交通費は医療費控除の対象にはできても、高額療養費制度では支給されません。医療費控除は税金が安くなるだけで費用を戻してもらえるわけではないですから、通院の費用などは医療保険でカバーするしかないということですね。
ほかに、入院中の食費や、歯科の材料費なども対象外です。高額療養費制度があるから医療保険はいらないと言う人もいますが、通院・入院では、病院に支払う以外にもいろいろとお金がかかるということを踏まえて、高額療養費でカバーされるのはどこまでなのかを知ったうえで、考えてみてほしいと思います。
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【支給額の計算方法】
Q4:医療費がいくらかかったら対象になるの?
A4:年齢や所得水準によって変わります。
まず、年齢は70歳未満か、それ以上かで扱いが変わります。次に、所得の水準を区分けして、自己負担額の上限を決める形になります。
当然、所得の少ない人ほど上限額が低く決められていて、よりこの制度に助けられることになります。表でまとめると次のとおりです。
年齢
|
所得水準
|
自己負担額
|
70歳
未満 |
上位所得者(標準報酬月額53万円以上。国民健康保険の場合、基礎控除後の基準総所得が600万円以上。) | 150,000円+(総医療費-500,000円)×1% |
一般(「上位所得者」でも「低所得者」でもない場合) | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | |
低所得者(住民税非課税の場合) | 35,400円 | |
70歳
以上 |
現役なみ所得者(標準報酬月額28万円以上かつ年収が夫婦世帯520万円以上、単身世帯383万円以上。国民健康保険の場合、住民課税所得145万円以上かつ年収が夫婦世帯520万円以上、単身世帯383万円以上) |
外来(個人ごと):44,400円 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% |
一般(「現役なみ所得者」「低所得者I・II」以外) |
外来(個人ごと):12,000円 外来+入院(世帯):44,400円 |
|
低所得者I(住民税非課税世帯で所得がない) |
外来(個人ごと):8,000円 外来+入院(世帯):15,000円 |
|
低所得者II(住民税非課税世帯で「低所得者I」以外) |
外来(個人ごと):8,000円 外来+入院(世帯):24,600円 |
上の表の、自己負担額を超えたぶんの医療費が、この制度から支給されることになります。
Q5:支給される額や回数に上限はあるの?
A5:特にさだめはありません。
支給額の累計について特に決まりはありません。回数についても、何回も病院に行くことになったら、何回も対象になりますし、月3回以上、高額療養費の支給を受けた場合、「多数回該当」として、その月の自己負担上限額がさらに引き下がります(つまり、支給される額が増えてお金が多く戻ってきます)。70歳未満一般の場合、多数回該当では44,400円が上限になります。
Q6:家族全員の医療費を合計してもいいってホント?
A6:世帯で合算して構いません。
同じ健康保険に加入している場合に限り、世帯の人がそれぞれ支払った医療費のうち、月に21,000円以上の自己負担があったものについては、同じ月内のものを合算できます。
たとえば国民健康保険に加入している70歳未満の夫婦2人の世帯で、所得水準は「一般」であったとします。ある月に、夫が6万円の医療費を支払ったとき、それだけでは自己負担上限額に満たないので、高額療養費制度は使えません。
ですが、同じ月に、妻が3万円の医療費を支払っていた場合、ふたりぶんの医療費を合算して、9万円の自己負担があったとして考えてよく、この場合は上限額を超えるので、高額療養費制度の対象になります。このとき、妻の医療費が21,000円未満だった場合は合算できません。
Q7:月をまたいだ出費は合算できない?
A7:月をまたぐと合算できません。
高額療養費制度は月単位で考える制度ですので、たとえばふた月に渡って通院し、ふた月ぶんを合算すれば上限を超える場合でも、各月ごとに計算すると上限に至らない場合は、残念ながら制度の対象にはなりません。
Q8:医療費の計算のしかたがよくわからないんだけど……
A8:例をあげて詳しく見てみましょう!
70歳未満の夫婦で、所得水準は一般、同じ健康保険に入っている同一世帯の場合で考えてみます。この夫婦が、ある年の1月~2月にかけて、次のような医療費の負担があったとします。
夫
|
妻
|
|
1月
|
(1)A病院の外来で80,000円を支払う。 (2)A病院の処方箋で、院外のB薬局で薬をもらい、7,000円を支払う。 |
(3)C病院の外来で、3,000円を支払う。 |
2月
|
(4)A病院の外来で30,000円を支払う。 |
(5)D病院の外来で24,000円を支払う。 |
まず、かかった医療費を以下のように分けて計算します。
・月ごとに計算する
・世帯の人ごとに計算する
・受診した医療機関(病院)ごとに計算する
・同じ医療機関でも歯科だけは別に計算する
・入院と外来は分けて計算する
上の表で(1)~(5)まで、番号を振ったのがそれにあたりますが、(2)は、(1)の外来の処方箋で出された薬の医療費であって、このときは院外薬局であっても同じ医療機関のものとして計算していいことになっています。
すると、(1)と(2)を合計して、1月に夫が負担した医療費は87,000円となります。同じ月内に、同一世帯の妻が3,000円の医療費を負担していますが、70歳未満の場合21,000円を超えないものは合算しませんので、(3)は対象外になります。
高額療養費制度の自己負担限度額と照らし合わせてみると、70歳未満一般の上限は、
80,100円+(総医療費290,000-267,000円)×1%=80,330円
となります。「総医療費」は、10割の医療費のことです。この月の自己負担額は87,000円で、これは3割だったので、10割では290,000円になるというわけです。そして自己負担額上限が80,330円なのに、87,000円を支払っているのですから、上限を超えたぶん、6,670円が支給されることになります。
2月ぶんについてみてみましょう。(4)と(5)はそれぞれ21,000円を超えているので合算できます。この月の自己負担額は54,000円です。総医療費は180,000円の計算です。制度での自己負担上限は……
80,100円+(総医療費180,000-267,000円)×1%=79,230円
となります。この月の自己負担額は上記を超えませんでしたから、2月については高額療養費制度の対象外ということになりました。
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【手続きしたいときは】
Q9:支給してもらいたい場合、どんな手続きをすればいい?
A9:加入している健康保険の窓口に申請します。
自分が加入している公的な健康保険の窓口に申請を行いますが、詳細な手続きの仕方は保険によって違います。健康保険を運営しているところを「保険者」と言い、保険証を見れば書かれています。
中小企業の保険は、全国健康保険協会(協会けんぽ)の運営でしょう。自営業の人などが入る国民健康保険などでは、住んでいる市町村になっているはずです。
手続きは、保険によっては自動的に申請書を送ってきてくれることもありますし、特に手続きをしなくても勝手に振り込んできてくれる場合もあります。
申請が必要かどうかは、会社員の人で会社の健康保険に入っているなら職場の総務の人に聞いてみるか、保険証の保険者の欄に書かれているところ(協会けんぽの場合、協会の支部名が書かれているはずです)へ連絡して下さい。国民健康保険なら、市町村の役所の窓口に問い合わせを。
手続きが必要な場合、専用の申請書のほか、保険証、印鑑、預金通帳など振込先がわかるもの、そして医療費の領収証が必要です(保険によって、特に必要ない場合もあります)。役所の窓口などに行かなくても郵送で申請できる場合もあります。
●会社員の場合で、保険証の「保険者」の欄が「全国健康保険協会○○支部」となっている場合
→全国健康保険協会( http://www.kyoukaikenpo.or.jp/ )へ。サイトから申請書をダウンロードして郵送で手続きすることもできます。
●会社員の場合で、上記以外
→勤務している会社の総務担当などに申し出て、指示を受けて下さい。または、自動的に手続きされる場合もありますので、同じく会社の担当者に確認を。
●国民健康保険の加入者の場合
→保険証の「保険者」の欄に記されている市町村の役場で手続きできます。郵送などでできるかどうかは各市町村に問い合わせを。
Q10:昔、かかった医療費についてさかのぼって申請してもOK?
A10:2年前のぶんまで申請してOKです。
高額療養費制度は申請しないと支給されませんので、「そういえばあのときは、ずいぶんお金がかかったなあ……」と思いあたることがあれば、調べてみましょう。
「2年前まで」というのは、「初診を受けた月の翌月の初日から2年間」です。
たとえば2012年2月に初診を受けた場合、2012年3月1日から2年間、2014年2月末日までが申請の期限になります。
Q11:申請してから実際に支給されるまでどれくらいかかる?
A11:3か月ほどかかります。
え~、そんなにかかるの!?と思ってしまいますが、支給を決めるために、医療機関が発行するレセプト(医療費の請求書のようなものですね)の確認が必要で、これに時間がかかるのだそうです。
健康保険によっては、支給を待てない人が自己負担額の一部を借りることができる「高額医療費貸付制度」がされていることもあります。
医療保険の保険金は、請求後一週間~10日程度で振り込まれることが多いですから、医療保険には高額療養費制度の支給までのタイムラグを埋めるというメリットもあるわけです。
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【その他の気になる疑問】
Q12:かかっている病気の種類によって何か違いがあるの?
A12:基本的には、違いはありません。(ごく一部の例外があります)
民間の医療保険ですと、ガンや成人病などの場合、保険金額が上乗せされる特約があったりしますが、高額療養費制度は、かかった医療費の対象となるものの種類、つまりどんな病気だったかということは支給に関係しません。
ただし、人工透析を受ける場合や、血友病の治療など、長期間にわたって高額な医療費が必要になり続ける場合は、特例として自己負担限度額が大幅に引き下げられます。
Q13:あとで支給されるのを待てないので、窓口での支払い額を抑えたいんだけど……?
A13:入院する場合は、事前の手続きで自己負担限度額ぶんだけの支払いですみます。
入院のときは費用が高額になることが予想されます。そうすると、いくらあとで高額療養費制度を利用するとしても、病院にまず支払うお金がない……ということもありますよね。
そういう場合、加入している健康保険へ入院前に連絡して、「高額療養費自己負担限度額適用認定証」という書類を発行してもらえばOKです。これを入院する病院に提出すれば、支払いのときに、高額療養費制度の自己負担限度額ぶんだけ支払えばよくなります。
これを高額療養費の現物支給と言います。「現物支給」と聞くとなにかヘンな気がしますが、「あとでお金を返してもらう」のではなくて、「この制度を利用して医療サービスを受ける」(お金を払わなくてよい)という意味で「現物支給」と呼ばれているようです。
Q14:高額“医療費”制度っていうのも聞いたことがあるけど、それって間違い?
A14:たぶん間違いです。でも「高額医療・高額介護合算療養費制度」という別の制度もあります。
このページで紹介している制度は、よく間違って書かれていますが高額“療養費”制度です。
「高額医療・高額介護合算療養費制度」は、医療費に加えて介護費用の負担があって、年間を通じて医療費・介護費の額が大きかった場合、費用の一部が支給されるというものです。
Q15:医療費控除とは違うんですよね……?
A15:違います。
高額療養費制度は、医療費が決まった額以上にかかったとき、そのぶんを戻してもらえる制度です。医療費控除はかかった医療費の額に応じて、税金を安くしてもらえるしくみ(医療費額がそのまま引かれるわけではありません)。同じようですが別の制度です。ややこしく感じるかもしれませんが、両方の制度を同時に使うことができるので、ぜひ利用しましょう。
ふたつの制度は対象になる医療費の範囲がちょっと違っていて、高額療養費制度では対象にならない通院の交通費なども、医療費控除には含めることができます。
また、高額療養費制度が月単位で医療費を考えるのに対して、医療費控除は年間の医療費に対して控除があります。医療費控除で対象になる医療費は、高額療養費制度や医療保険から支給されたぶんは差し引いて計算します。
【参考リンク】
●厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/100714.html
→制度について解説したPDFファイルをダウンロードできます。
●高額療養費パーフェクトマスター
http://www.bms.co.jp/kogakuryoyo/index.html
→制度にあてはまるかどうか、いくら支給されるかが簡単にわかるシミュレーションができます。